奈良県の現地情報

山中の燃ゆる『大』の字

大文字焼きと言えば、京都を連想しますよね。

しかし、古都、奈良でも大文字焼きは存在します。

行われるようになったのは近年である、昭和三十五年ですが、それでも五十年以上の歴史がある伝統行事になっています。

行われるのは八月の十五日で、盂蘭盆に相当します。

八月の十五日は終戦記念日――――そう、この奈良の大文字は、奈良県出身の戦死者達を慰める為の行事なのです。

『大』いう文字には宇宙という意味があり、火は浄化という意味合いがあります。

その火によって人体に潜む七十五法という煩悩の焼却と共に、戦死者達の弔いを行うのです。

大文字を行うのは、当初かなり大変だったらしく、現在ならば携帯電話等で連絡を取りつつ指示が出来るのですが、開始され始めたばかりの昭和三十五年にそんなものは無く、下で白旗を振って貰いながら試行錯誤の末、大の字の位置決めをしたそうです。

大文字が点火される前には、慰霊祭が行われ、奈良市内の寺のお坊による仏式供養と、春日大社の宮司による神式の供養の両方が行われます。

このように、神式と仏式の両方を行うというのも、日本の歴史が詰まっている奈良ならではの光景なのでしょう。

慰霊祭の後に点火され、『大』の文字が轟々と燃え盛ります。

しかし遠目から見ると、どこかぼう、とした幻惑的な光景にも見えます。

矢張り盂蘭盆だけあって、そういう彼岸というものの、境界線が揺らぐのでしょうか?

闇夜に映える赤い輝きは、悲しげでもなく、かと言って、激しく燃え盛っている訳でもなく、自然の一部のような自然な佇まいで燃え続けます。

もしかしたら、美しく燃え誇る火を目印に、死んだ人々が現世に戻って来ているのかも知れません。

歴史のある街の奥――――その奥の山で燃える『大』の字は、貴方にどんな事を伝えるのでしょう。

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