山口県の現地情報

山口県、赤間神社では七月になると、『耳なし芳一』に因んだお祭り、『耳なしほういちまつり』が催されます。

これは、赤間神社境内にある『芳一堂』や平家一門の墓、『七盛塚』を前に琵琶の演奏などが奉納されるというお祭りです。

知っている方も多いでしょうが、『耳なし芳一』とは、平家一門を祀った阿弥陀寺(現在の赤間寺)を舞台に語られる物語で、ラフカディオ・ハーンこと、小泉八雲の『怪談』に取り上げられ、一躍有名になりました。

子供向けの童話として語られる場合もあり、私も、子供ながらにそのショッキングな内容と、仄かに香る陰鬱さに閉口したものです。

物語の概要としては、こんな感じです。

阿弥陀寺には、目の見えない芳一という琵琶法師が住んでいました。

彼は、平家物語を語り弾きするのが得意で、特に平家物語の『壇ノ浦』の部分は、鬼神も涙を流すと言われた程の腕前でした。
 
そんな芳一ですが、ある日、阿弥陀寺の和尚が留守の時に、阿弥陀寺に一人の武士が訪ねてきました。

武士は芳一の琵琶の腕前を褒め、是非自分の仕える『高貴なお方』の屋敷に琵琶を弾きに来てくれないか、と請われ、快くもその武士の言う屋敷に琵琶を弾きに行く事となりました。

芳一は目が悪いので道中はよく分かりません。

若干不審には思ったものの、そんな事を考えている内に、武士の言う『高貴なお方』の住むお屋敷へと到着します。

そこには多くの人々が集まっているらしく、芳一は其処で平家物語の壇ノ浦のくだりを所望されます。

芳一が語り始めると、屋敷の中にいる人々は芳一の巧みな演奏を最初こそ誉めそやしますが、次第にすすり泣きを漏らしたりと、不可解な反応を見せます。

演奏が終わり、一息吐いた芳一でしたが、翌日も来てくれと請われ、これを了承します。

そしてその次の日も、次の日も、と言われ、結局七日七晩連続で弾く事になってしまいました。

そんな芳一の行動を不審に思った和尚は、寺男に芳一の後を付けさせます。

寺男が見たのは、平家一門の墓の中――――それも平氏が崇拝していた安徳天皇の墓の前で、無数の鬼火に囲まれ琵琶を弾く芳一の姿でした。

芳一の身を案じた和尚は、芳一の体に般若心経を書き写します。

これは怨霊の経文が書かれている部分は視認出来ないという性質を利用したもので、これによって自分が傍に居られない時の芳一を守ろうとしたのです。

和尚は芳一に、平家の亡霊が来ても無視するように注意を促しました。

その日の夜も平家の亡霊は現れ、芳一の名を呼び、彼を捜しに来ました。

芳一の姿は、亡霊には見えません。

しかし、一箇所だけ経文を書き忘れた部分がありました。

それは耳です。

耳だけは経文を書き漏らしていたのです。

平家の亡霊は宙に浮く芳一の耳を見つけ、せめてもの証拠に耳だけは持ち帰ろうと、彼の耳を引き千切りました。

芳一はあまりの痛みに気絶し、平家の亡霊は消えていきました。

翌日、和尚は倒れている芳一を発見し、介抱したというお話です。

現代にも伝わる怪談、耳なし芳一――――七月の暑い夜には、最適なお話だと思います。

それに纏わる『耳なし芳一まつり』は七月の十五日に例年行われます。

物悲しい雰囲気を感じに足を運んでみてはどうでしょうか?

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